こんばんは、たまゆりです。
この度、私が巡礼に行くことを決めるにあたって、何冊かサンティアゴ巡礼をテーマにした小説・エッセイを読みました。
このブログで、私が読んだ中でお気に入りの「スペイン巡礼」「サンティアゴ巡礼」をテーマにしている本を、いくつかご紹介したいと思います。
まずは、一番の王道とも言える、この本から。
パウロ・コエーリョ著 ”星の巡礼”
- 作者: パウロ・コエーリョ,山川紘矢,山川亜希子
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 1998/04
- メディア: 文庫
- 購入: 2人 クリック: 25回
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ブラジルの小説家・パウロ・コエーリョが、1995年、自らのサンティアゴ巡礼の体験を基に書いた初の作品です。
この本がきっかけで、サンティアゴ巡礼を知ったという方も多く、巡礼者の方の多くが手に取られている本です。
私にとっても、この本はとても大切なものです。
1年前の私は、サンティアゴ巡礼のことはなんとなく知っていて、行ってみたいとは思っていたけれど、まさか自分にできるはずがない、と思っていました。
その頃、仕事や、自分のこの先の人生に深く悩んでいた私は「もう死んでしまいたい」とすら考えていた。
けれど、この小説で書かれている「良き戦い」という一節に、ひどく心を揺さぶられました。
この言葉に胸を打たれて、背中を強く押されて、私は「死にたい」と思っていた気持ちから立ち上がることができました。
その「良き戦い」の一節をご紹介したいと思います。
「良き戦いとは、夢のために戦われる戦いのことだ。
われわれが若く、夢が初めて内側からはじけ出す時には、われわれはこの上なく勇気に満ちている。
しかし、まだどう戦えばよいのか、その方法を学んでいない。努力に努力を重ねて、われわれは戦いの方法を学ぶが、その頃には、すでに戦いにおもむく勇気を失ってしまう。
そこでわれわれは自らに背き、自分の心の中で戦い始める。つまり、われわれは自分自身の最悪の敵になるのだ。
そして、自分の夢は子供じみていて、難しすぎて実現できない、人生を十分に知らないせいだと言い聞かせる。良き戦いを戦うのを恐れて、自分の夢を殺してしまうのだ。」
そのころの私は、 まさにここに書かれているとおりでした。
自分の、もっと旅を知りたい、世界を知りたい、という気持ちはあまりに子供じみていて、突拍子がなく、実現させられるはずがない、と思っていたからです。
そうして、自分の胸の内の夢を殺して生きていた。だからあんなにも「死にたい」と思っていたのです。
「夢の死による症状は、われわれの核心の中に現れる。
人生を偉大な冒険として見たくないがために、人生にほとんど何も望まない方が、賢くて公正で正しいと思い始める。
そして、日々の暮らしの壁の向こう側を覗き見し、槍が折れる音を聞き、ほこりと汗のにおいをかぎ、戦士たちの目の中に、大いなる敗北の姿を見る。
しかし、われわれは、戦いに行った者の心に宿る喜び、無限の喜びを見ようとはしない。戦う者にとって、勝利も敗北も大切ではない。大切なのは、彼らが良き戦いを行っている、ということだけなのだ」
そして、続くこの言葉に、頭をがつんと殴られたようになりました。
私は、壁の内側で、いろんな人生の夢を叶えている人たちを覗き見しながら、あんな風にはなれないとつぶやいていたからです。
そしてこの言葉を読んで、強い衝動が私の中に生まれました。
なにを戦うのか、どうやって戦うのか、それはまだよくわからなかったけれど、「私も壁の向こうの人たちのように戦いたい」「自分の人生の良き戦いを戦いたい」と強く思うようになりました。
「夢をあきらめて安逸を見出すと、われわれは、ほんのしばらくは安らかな時期を過ごす。
しかし、死んだ夢はわれわれの中で腐り始め、われわれの全存在を侵し始める。われわれはまわりの人に冷たくなり、さらにはその冷たさを自分自身に向け始める。こうした時、病気やノイローゼになるのだ。
戦いの中で避けようとしたもの、つまり、失望と敗北が、われわれの臆病さのゆえに、われわれに襲いかかってくる。
そしてある日、死んで腐敗した夢は、われわれを呼吸困難におちいらせ、実際、われわれは死を求め始める。それはわれわれを、自らの確信、仕事、そしてあのおぞましい日曜の午後の平和から自由にするものなのだ」
この頃の私は、自分にも周りの人たちにも、まったく心を穏やかに接することができず、周りに冷たく当たってばかりいました。そんな自分が嫌で仕方ありませんでした。
そして、この一文を読んでわかりました。それは、自分が夢を叶えられないことに鬱々として、その苦しみを周りに投げつけていたのだと。
この本や、サンティアゴ巡礼を本気で目指し始めたことをきっかけにして、今の私は、自分自身をよく愛し、そして周りにこの上ない感謝の気持ちを持つようになりました。
このごろ私は、自分の部屋の窓辺で、花を育てるようになりました。以前の私なら考えられなかったことです。
「自分自身が満たされて初めて、他の生き物に目を向けることができる」
これは、よしもとばななさんの「虹」や「みどりのゆび」という短編小説を読んで少しずつわかったことですが、本当にその通りだと思っています。
そこで暮らす人の心が豊かなら、自然とそこにある人、植物、動物も、いきいきとしてくる。
水をやったり、少し肥料をあげたり、太陽の下に出したり、寒い日は部屋の中に入れたり…そうしていることで、毎日少しずつ、葉を増やし、茎を伸ばし、つぼみを膨らまし、成長していく様を見せてくれる。
それを見ていると、また本当にうれしくなって、心が安らかになって、花と私との間で、エネルギーを相乗しながら交換し合っているような感じなのです。
本当に幸せなことです。
今の私がそうなれたのは、自分自身の夢を追いかけて「良き戦い」を戦っているから。
この本に出会えて本当によかったです。
もし興味を持たれたなら、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。
2018.5 追記
巡礼の旅から帰った後、なんとこの「星の巡礼」を翻訳された、山川紘矢・亜希子ご夫妻の、紘矢さんがこのブログ記事にコメントをくださいました。
お礼のメールをやりとりし、その後、亜希子さんにお会いすることができました。
暖かいエネルギーに満ちた、とてもすてきな方でした。
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- 作者: パウロ・コエーリョ,山川紘矢,山川亜希子
- 出版社/メーカー: 角川書店
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アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)
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はじめまして、すごくpureなブログですね。私も今年巡礼予定です。すでにこの7年で5000㎞位caminoを歩きましたが、最初に歩いたフランスの道とその翌年の夏歩いた北の道の印象が深く、また歩きたいと考えています。ここ数年はマニアックになりすぎて、アルベルゲも一人泊、巡礼路でも誰にも会わない道を歩いたりしました。でもcaminoの魅力は、いろいろな国の人と出会って、話をしたり一緒に食べたり飲んだり、時には歌ったり踊ったり、そして自分をみつめる時間があることです。行く前にあまりゴチャゴチャ言わない方がいいと思いますので、ぜひ楽しんで無事に帰ってきてください。時期が合えば会えるかもしれませんね。Buen Camino!
Hiroさん、はじめまして。コメントいただきありがとうございます。
7年前というと、今と違って歩かれた日本人も情報もとても少ない時だったでしょうに、その頃からサンティアゴ巡礼を続けられているとは…すばらしい審美眼といいますか、アンテナといいますか、そして行動力をお持ちなのですね。
「いろいろな国の人と出会って、話をしたり一緒に食べたり飲んだり、時には歌ったり踊ったり、そして自分をみつめる時間」
とても胸に響いて、すとんと心にはまる言葉でした。無事に楽しんで帰ってきたいと思います。お会いできたら嬉しいなぁ。
それではBuen Camino!
今年、2016年、6月3日、ブルゴス泊、4日オルニジョス泊、6月5日カストロへリス泊ということで、1日20キロ、二日間で40キロを歩きました。季節は最高、赤い花、白い花、青い花、紫の花、黄色い花の道を行く。巡礼の道は以前、ローカルなバスを使って1ヶ月でサンチャゴ・デ・コンポステーラまで旅したことがあります。その後、パウロ・コエーリョの「星の巡礼」。シャーリー・マクレーンの「カミーノ」などを翻訳しました。2日間だけの遠足は最高に気持ちよかったです。僕は内省的にならず、写真を撮っては楽しんでいたので、精霊から少ししかられました。少し、反省しています。同行者は山川亜希子、スペイン在住のゆりかさん、ゆみこさんでした。毎年、一番いい季節に3日間ぐらい,のんびりと歩きたいなと思いました。ブルゴスからカストロへリスまではなだらかな麦畑で、本当にきれいでした。たまゆりさんのブログを見つけて、楽しませていただきました。
紘矢さん
こんにちは。
初めてこの紘矢さんからのコメントを拝見した時は、驚いて、うれしくて、スペインで飛び上がりました。
わたしはこの本の中の言葉に胸を打たれ、巡礼に行くことを決め、それから自分の人生が大きく変わっていった。私にとってお二人は恩人だったからです。
昨日、けやき美術館の亜希子さんのお話会に出かけ、亜希子さんにおふたりで歩かれた巡礼のようすを伺いました。
カストロヘリスの近くから見た、一面のポピーや菜の花、色とりどりのお花畑の景色は私も800km歩いた中でとても印象深い景色でした。
亜希子さんは、握手してくださった手や、瞳や、ことばのひとつひとつから愛があふれる本当に素敵な方で、お会いできてとても嬉しかった。
近いうちに、紘矢さんにもお目にかかれる機会があることを楽しみにしております。