旅の動機・きっかけ

北の道?フランス人の道? 迷っています。私は何のために巡礼へ行くのか。

北の道に行くか、フランス人の道に行くのか、ずっと迷っています。

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あの時、北の道だ!こっちだ!と思いました。大好きな海の近くを、歩きたいと思ったから。そこに暮らす人々を見たいと思ったから。

それに、北の道はまだ歩いたことのある日本人が少ないから、「人があまりやったことのないことをしてみたい」って、野心みたいな、注目されたい心も、あったと思う。

関連記事1:北の道を歩くことにしました!

関連記事2:海と寄り添って生きる暮らしを知りたくて、北の道へ。

だけど今、日本の西国観音巡礼を重ねて、何にふれたいかというと、神様というものにふれたい。

人々の暮らし。祈り。祈りを知りたい、信仰を知りたい。さまざまな巡礼者たちが胸に持つ思いを知りたい。それぞれが何を願って歩くのか。
わからないのだけど、フランス人の道は、歩く人が多いぶん、その祈りを持った人を、より多く内包しているような気がする。

そこに根差す、巡礼者たちを助けて働く人々の祈り。地を這って巡礼道を歩く人たちの祈り。通る街々に暮らす人たちの祈り。それがどんなものなのか知りたい。それぞれの胸の内にある神様を知りたい。それがどんなものであるか、世界とは何か、人とは何か、なぜ生きているのか、その答えを、私は自分に、人に、世界に問いたい。

この道がその答えをくれるのかは分からないけれど、歩きたい。次なるヒントを探したい。

さまざまな国、さまざまな人の祈りの形。それこそ、この世界を、自分の生まれてきた意味を、知るための道である気がするから。知りたい。祈りの形を。

何に祈り、何に感謝し、何を畏れて、小さな私たちは暮らすのか。生を営むのか。他の生き物を殺して生きながらえ続ける。そのための祈り。それでも生きるための祈り。それを知りたくてたまらない、わたしは。そのための旅をしたい。

どこかにたどりつけるだろうか?

行っては戻って、戻っては行って。

本当にこんな生き方でよいのかと、不安に思うことばかり。

けれどもこの歩みを止めてしまったら私は私ではなくなって、自分で自分を、檻に閉じ込めた鳥のようにしてしまうだろうと思う。

20数年、短いながらも生きて来て、だんだんわかってきた気がする。

今の私にはこれしかない。動き続けるしか。移ろい続けるしか。探し続けるしか。

不変のものなど何もない。季節は移ろい、花は茎をのばし、蕾をふくらませ、咲いて、散る。そして枯れた花から種を生む。
地球そのものだって移ろう。何億年か後には、この星は太陽にのまれ燃えているかもしれないし、あるいは太陽は冷え切り静かな死んだ星となっているかもしれない。この宇宙だって、いずれは滅びる。私も変化し続けて、そして死ぬ。

そのことを考えないように生きていくことはあまりに簡単だ。

きっとその恐怖、畏れ、そういったものを忘れてしまう為に、わたしたちは街を作り、夜の来ない都市を作ったのだという気がする。

だけどわたしはその向こうを見たい。見たくなってしまった。

私の父は私が小学校に上がる前、自分で死んだ。記憶は遠いが、彼が残したおびただしい数の本、彼が書いた小説、レコード、旅の写真、それらを思い出して考えることがある。
自らこの世を離れると決めた父は何を思ったのだろうか。
わたしにも一度、もう生きていることをやめてしまいたいと思ったことがあった。それでも立ちあがって、生きようと思った。そのとき彼を超えたと思った。

けれどまだずっと、もっと深い場所に、彼はいたのかもしれない。ずっと深い場所に。私が見た物よりもずっと、暗い深淵を覗いていたのかもしれない。

だとすればわたしもその景色を見たい。そしてその先へ行ってみたい。

もっと深淵を覗きたい。

自分の生への絶望を知り、その無意味さに打ちのめされて、そして、それでも生きていく意味を、もがきながら探したい。

それは私の人生に課された宿命なのではないかと、頼りないいつもの勢いばかりで、こうして書いている。

さて!どんな巡礼の旅になるのか、楽しみです。

フランス人の道、北の道、本当に今歩きたいのはどちらか、ぎりぎりまで迷ってみようと思います。

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