さんぽ旅

いのちが始まる場所。熊野の海の生まれ故郷を訪ねて【和歌山県・植魚の滝/ハリオの滝】

こんにちは、たまゆりです。

今回は、和歌山県の山あい、古座川町にある二つの美しい滝「植魚の滝」と「ハリオの滝」を目指します。

秋が深まるこの季節ならではの渓谷歩きを楽しみたいと思います。

個性的な名前の二つの滝。

「植魚の滝」は、恐竜の巣にも例えられる洞窟の奥の滝。「ハリオの滝」は、ブルーホールのような滝壺が美しい滝。とのことですが…

どんな景色が広がっているのか期待に胸が膨らみます。

 

こちらの記事は、YouTube「たまゆり自然部」にアップした動画をブログに起こしたものです。

秋ならではの渓谷の美しさがめいっぱい詰まった映像になっているので、ぜひ癒しが欲しい時にご覧ください〜!

 

熊野灘の源流、古座川

古座川町は和歌山県南部に位置しています。

町名にもなっている「古座川」は、標高1122mの大塔山から熊野灘までの約60kmの流れ。

今日訪れる二つの滝は、どちらもその源流にあたる谷にあります。

アクセスは(例の如く)少し大変で、大阪からは車で約3時間半、名古屋からは約4時間半。

落石がゴロゴロしていたりアスファルトがえぐれていたるする山道を1時間ほどガタガタ揺られながら走り、ようやく登山口へ到着します。

 

「植魚の滝」のちょっと不思議な由来

「植魚の滝」ユニークな名前の滝ですが、その由来は、昔この地に住んでいた太郎という男にまつわるお話。

ある日、海の町へ出掛けて行って漁師からカツオをもらった太郎。

漁師さんに「つくって食べよ(=お造りにして食べてね)」と勧められたその言葉を、山深い土地の民ゆえに「畑で作ること」と勘違いしてしまったのです。

太郎はそのカツオをこの滝に「植えて」育てようとした…

そんな逸話から「植魚の滝」という名前が生まれたそうです。

この土地で暮らしを営んでいた人々のあたたかみが伝わってくるようで、なんだか素敵なお話です。

あのHARIO?と思いきや…

もう一つの「ハリオの滝」。

ガラス製品のメーカー「HARIO」と似た名前のため、ついそちらを思い浮かべてしまいます。が…

この滝の名前の由来は、実は「張尾谷」というこの滝が流れる谷の地名に由来するもの。

しかし、川の流れが本当に美しいので、ガラスと関係があるのかとつい考えちゃいます。

透き通るような青い滝壺を持つハリオの滝は、その透明度の高さが特徴。水の中に差し込む光と滝壺の深いエメラルド色は、「ブルーホール」のように神秘的です。

 

清流、苔、落ち葉…全身で浴びる癒し

駐車スペースがある登山口から先は、川づたいに徒歩でのトレッキングが始まります。

道中にはもこもこふわふわと豊かに苔が生い茂り、足元には色とりどりの落ち葉が敷き詰められています。

風が吹くたびに葉がゆらぎ、陽の光が苔や落ち葉の上で淡く揺れる。

ちょうど雨が降り続いた後だからか、左右の岩の壁に生えた苔には、水の粒が後から後から伝っては落ち、伝っては落ち、川の中へと溶けていきます。

いつも見ているあの雄大な熊野灘も、この一粒ずつの水滴があつまってできたもの…

そう考えると、愛おしさが湧いてやみません。

川のせせらぎが耳元で心地よく響き、空気中に舞う細かい水の粒が、体の細胞と、心の襞にまで染み込んで癒して行ってくれているかのよう。

普段の暮らしの中ではついなおざりにして忘れてしまっていた、ちっ〜ちゃい心のコップまでも、すみずみと満たされていくのが分かります。

苔や水滴、落ち葉、視界に入るもの全てがキラキラと宝物のように見えて、思わず足を止めてしまいます。

立ち止まっては、カメラを向け、ニヤニヤとしながら鼻息荒く観察し…。

時間があっという間に過ぎていってしまって、ぜんぜん前に進みません(笑)

 

モンベル「サワタビ」の活躍

2つの滝を目指して歩く道中には、同じ川を何度も左右の岸へ渡ります。

コンクリートで固められて足場がしっかりしているところもあれば、それが崩落しているところもあり。そしてもちろん滑りやすい苔に覆われた岩場もあります。

今回初めて履いた、モンベルのサワタビという沢登りシューズが大活躍してくれました。

靴底が薄い分、しっかりと足裏の力で岩をつかむことができて安定感があります。ちょっと足は疲れやすいですが、今日くらいの行動時間(半日)であれば大丈夫そうです。

恐竜の巣のような洞窟の奥地「植魚の滝」

いくつも川を渡り、渓谷の奥まで分け行ってきました。

ここからは左右に道が分かれていて、左手が植魚の滝、右手がハリオの滝。まずは植魚の滝へと向かうことにします。

奥へと進むと、なにやら上流の方に怪しげな洞窟のような暗い空間が現れました。

え…もしかしてあそこに行くの?

黒い岩の壁が発するただならぬオーラに戦々恐々としながらも、看板に従い奥へと近づきます。

そばへ寄ってみると、左右に聳り立つ巨大な岩壁が、まるで恐竜の群れのようにこちらへ迫ってくるかのよう。

頭上のいろんな場所から水滴が降り注いでいて、滝へと続く道は完全に川の中。

今日は濡れるつもりはなかったのに…と思いながらも、天然のシャワーでびしょびしょになりながらさらに奥へ奥へと進んでいきます。

 

周りを高い岩壁に囲まれているせいで、水音が周囲に反響し、自分の声も聞こえないほどすさまじい轟音が鳴り響きます。

上から降り注ぐ水で目をあけにくく、耳は轟く水音で塞がれ、おそるおそる足を進めていくと…。

ありました!!!これが、植魚の滝。

ひときわ高い岩壁から、一直線に白い竜のような水爆が流れ落ち、正面の岩にぶつかって流れを変え、二段の滝になっています。

滝壺は神秘的なブルー。水中カメラで中を覗いてみると、大きなアマゴが身をひるがえして透明な水の中を舞うように泳いでいます。

なんて、神秘的なんだ…。

耳がどうにかなってしまいそうなほどの大迫力の音に包まれ、しばし滝壺の浅瀬に立ち尽くし、その姿を堪能したのでした。

 

段々に深くなる不思議な滝壺「ハリオの滝」

植魚の滝のあまりの迫力にすっかり圧倒されてしまいました。

名残惜しく思いながらも滝を後にし、再び分岐点に戻って、今度は「ハリオの滝」を目指します。

分岐点から数メートルもいかないうちに、木々の合間から水音が近づき、白くキラキラ光る水の帯が見えてきました。

近づいていくと、現れたのはなんとも不思議な滝壺。

エメラルド色の水をたたえた滝壺は、岩が幾層にも削られいて、段々に深くなっていく様子が見てとれます。まるで人工物かと思うほど、きれいな階段上になっているのです。

一番深いところは、透けては見えているけど、水深がどれくらいあるのかはよくわからない。

まるで子供の頃、海で遊んでいてフッと足がつかないところに来てしまった時のような、胸がヒュンッとなる怖さが背筋に走ります。

自然が作り出した彫刻のような造形美に、ただ見惚れるばかり。

さらに、周囲の岩が赤く染まり、緑の苔とのコントラストが秋らしくとても美しい。

これは、ベニマダラという大変希少な藻の一種が、岩肌に付着したもの。

今日、車で走っている時から「古座川はウグイス色みたいな不思議なグリーンをしているな」とどうも不思議に思っていたのですが…

もしかすると、水中にこの赤い成分が溶け込んでいるからこその色なのかもしれません。

ということは、熊野灘のあの不思議な暖色系のブルーも、この滝の藻が一役買っていたりして…?なんて、妄想をしてしまいました。

滝の横は歩いて登れるゆるい岩壁になっており、少し高いところから滝壺を見下ろすことができます。

滝の水音が響き、細かな水飛沫が風と共に全身を包み込むようにわたっていく…

とにかく気持ちよくて、しばし岩に座って「ホケーッ」としてしまいました。

次に訪れるときは、この滝壺で泳いでみたいな…。よし、次の春夏は滝行だ。

 

川が生まれる場所、いのちの故郷

地図で見つけた個性的な名前に惹かれて、今回初めて訪れた「植魚の滝」と「ハリオの滝」。

実際に足を運んでみると、そこはガラスのように透明なせせらぎと、ここは天国かと思うほどのコケの楽園。

そしてなにより、生き物をはぐくむ川のふるさとという、なんともいえない暖かさが広がっている素晴らしいところでした。

今、目の前の苔を伝う一粒一粒のしずくが、集まり、川を作り、最後には広い海へとつながっていく。

そんな水の旅路を思い、その旅路があるから生かされているわれわれのことを思い、なんだか生まれ故郷に帰ってきたかのような、不思議な安心感に包まれたのでした。

澄んだ流れと眩しく光る瀑布、神秘の滝壺、モフモフの苔と色鮮やかな落ち葉。

秋の色に染まる、静かで騒がしい清流の道を味わい尽くすことができました。

「植魚の滝」と「ハリオの滝」、お近くにお越しの際はぜひ立ち寄ってみてくださいませ〜〜!!

それではまた、たまゆりでした。

 

こちらの記事は、YouTube「たまゆり自然部」にアップした動画をブログに起こしたものです。

流れ落ちる水音の美しさがめいっぱい詰まった映像になっているので、ぜひ癒しが欲しい時にご覧ください〜!

 

 

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