↑前回の記事の続きです。
2021年10月29日
中山道歩き9日目
奈良井宿〜平沢〜贄川宿〜木曽路終点
歩行距離:15.91km
標高1000m、奈良井宿の寒い朝
標高が1000m近くある奈良井宿は、朝の冷え込みもはんぱない!
起きてすぐに部屋に置いてもらっている石油ストーブをオンにして、暖をとりながらちょっとずつ着替えていく。
普段、朝ごはんをあまり食べない生活をしているので、朝食はお断りして(朝ごはんも、とってもおいしそうだった)、8時ごろお宿を出発します。
出かける時に、息子さんが見送ってくださって、お母さんが握ってくれたおにぎりを持たせてくださいました。
嬉しい!!!
歩く旅だからこそ感じる、人情
中山道、木曽路を歩いていて、毎度感じるのは、やっぱりこうした宿場町のお宿のあたたかさです。
きっと、街道が全盛であった江戸時代から、旅人とそれを迎えてくださるその土地のひとたちとの、人情のやりとりは変わらないのだろうな。
ちょっとおおげさな言い方だけれど、こういう時「人の営みは愛に満ちているなあ」「人の世は捨てたものじゃない」なんて思うのです。
それは、やはり、カミーノにしても、熊野にしても、歩く旅をしているといつも感じられることなのです。
だからこそ、私にとっての歩く旅は、今生きているこの世界をもっと愛おしいものにしてくれる、大切な時間なのだと思います。
漆器職人が集う、平沢の宿場町
さて、奈良井宿を出てしばらく行くと「平沢」という集落に到着します。
平沢は、漆器職人さんが集まる町で、現在でも通りを歩くと漆器屋さんの看板でいーーーっぱい!!!
まだ朝が早くお店は開く前でしたが、それでも圧倒される景色です。
これまで木曽路を歩いてきて、上松の材木集積場や、妻籠宿の多くの木の交易にまつわる場所を見てきました。
ここでも、木曽路はまさに、山林という自然の恵みを糧として生きる人々が住む土地であり、それによって栄えた道でもあることが伺えました。
金色に染まる奈良井川沿いを歩く。
平沢の漆器職人街を通り抜け、さらに先へと進みます。
これまでの木曽路は、文字通り木曽川沿いをずっと進んできました。
ですが、昨日通り過ぎた鳥居峠がちょうど分水嶺になっていて、ここから先は奈良井川のせせらぎにそって歩いて行きます。
宿で知り合った息子さん・Kくんによれば、鳥居峠を挟んで東西では全然気候も違うのだそうです。
現代のように車道がなかった時代には、山がまるで壁のようになって、自然の国境として、暮らしや文化の色を分けていたと思うと面白い。
ヨーロッパの広い大地を旅していると、街の周りを石造りの強固な城壁で守っているのをよく見かけますが(進撃の巨人の1話みたいに)。
日本という起伏の多い土地では、わざわざ人工的に壁を築かなくても、山や谷がそれぞれのテリトリーを分けていたのかもしれませんね。
さて、金色に染まる山々を眺めながらずんずんと歩いて、贄川宿の跡を通り過ぎて。
もうしばらく歩くと、ついに今回の旅の目標地点だった場所に到着です!
ついに、木曽路の終着点へ。
今回の目的地…それは、木曽路の終着点!
「是より西 木曽路」という文字が、とてもりっぱな石碑に刻まれています。
ちょうど昨年の冬に歩いた、中津川市のあたりに「是より北 木曽路」という碑があったそうなので(残念ながら、その写真は撮り忘れてました…)
今回で、中山道の木曽路の区間を歩き通せたことになります。
成長の機会をいただいた、木曽路の旅
思えば「時間があるし、家から近いのだから、歩いてみよう」と何気なく始めた中山道歩き。
まだ道半ばではあるけれど、木曽路を踏破できてよかった。
何もかも中途半端な自分が嫌で、そんな自分に自信を無くして「どうせ無理だ」「できなくても仕方ない、なんとなくはじめたんだからいつでもなんとなくやめればいい」と思って逃げていたところが、これまではあったような気がするのです。
でも今は、時間はかかってもいい、この先も続けて、東京日本橋まで歩ききりたい。自分ならできるだろう。
昨日も似たことを少し書いたけど、そんなふうに、自信を持とうと思えるようになったことが嬉しい。
この中山道の旅は、そんな成長の機会を私に与えてくれました。
歩きだから味わえた、文化が変化するグラデーション
これまで歩いてきた木曽路は、尾張の文化からじょじょに山にわけいり、木曽、信濃とどんどん山深い土地の文化が色濃くなっていくのが感じられました。
出会う人の言葉のイントネーション、お味噌汁の味。上がっていく標高に比例して澄んでいく空気。
その魅力がグラデーションのように変化していく様子を、ゆっくりとしたペースの歩き旅だからこそ味わうことができたと思います。
中山道旅、魅力いっぱいで本当に楽しい。
始める前、ただ退屈なのではと思っていた中山道歩きは、蓋を開けてみれば唯一無二の魅力でいっぱいでした。
あったかい人、あったかい宿、古くから受け継がれてきた営みと、左右を木々に囲まれ、四季折々に絵巻のように変化していく自然の風景。
そこを古くから旅してきた先人たちの息遣いをそこかしこに感じながら、木曽川のせせらぎと木々の葉が風に揺れる音、時には峠道の落ち葉を踏みしめる音、時には満開の桜の花びらが散っていく音なき音。それ以外には自分の息遣いしか感じない静かな世界を、ひとりで歩く幸せ。
時に、手袋をしているのに氷のように冷たくなる指先、赤くなってちぎれそうなほど冷たい耳と鼻先。
国道19号を走り抜ける車の排気ガス、歩道脇の線路を一瞬で走り過ぎていく特急電車。凍った地面の水溜り。そんな中でたまに見える深い山の隙間に顔を覗かせる中央アルプスや御嶽山の白く雪を被った神々しい姿。
そして、宿のストーブ、孤独な歩きの後で宿に出迎えられた時のあたたかさ、いつも食べきれないほどの、川魚、肉、きのこ、野菜、おいしいお酒とご飯とお味噌汁。たくさんの山のご馳走たち。
ああ、本当にいい旅をさせてもらったなぁ。
すごく幸せでした。
やっぱり歩く旅が大好きだ!!
歩く旅というのは、不便だし孤独で退屈なことだってたくさんあるけど。
振り返ると、自分が歩いた道筋の糸の上に、宝石の玉のようにきらきら光る記憶が残っています。
それらはやっぱり切り離すことのできない「道」で結ばれたひとつなぎの記憶だからこそ、光り輝いていると思うのです。
だから私は、やっぱり歩く旅が大好きだ。改めてそう思いました。
これまでの旅の中で、お世話になってきた宿や施設のみなさま、ブログのコメントやメッセージを通じて情報をくださったみなさま、そして亀さんペースの更新にお付き合いくださった読者のみなさま、本当にありがとうございました。
また、人生のどこかで、東京を目指し続きを歩ける日を楽しみにしたいと思います。
長くなりましたが、ここまでお読みくださって、ありがとうございます。
それでは、また!たまゆりでした。
P.S.
熊野へ引っ越して1週間が経ちました。
(↑自宅からほど近い、熊野古道横垣峠で昨日撮影した写真)
さっそく熊野古道を歩いたり、波音に耳を傾けたり、おいしい地元の食材をたくさん頂いたりして、楽しく暮らし始めています。
また、ご報告できるのを楽しみに、お仕事を頑張りたいと思います。
熊野暮らしの近況はTwitterや、Instagramのストーリーでもご報告しているので、もしよければそちらもご覧になってみてくださいね。
▼Twitterはこちら(@tamaoyurika)
移住してはじめての週末、さっそく熊野古道を歩いて参りました。
家から10分で熊野古道を歩くことができるだなんて、なんて幸せな環境なのだろう。。今日訪れたのは横垣峠。みかん畑の真ん中を通り、海の見える峠を過ぎ、苔蒸す石畳を下ると待つのは長閑な山里の景色…魅力が沢山詰まっていました❣️ pic.twitter.com/4w6Ib6EGaF
— たまゆり (@tamaoyurika) December 4, 2021
南紀は熊野、御浜町への移住1週目を無事に終えました。
とにかく何気なくスーパーで買う食材もおいしく、見たことないものが
沢山あり楽しいです。
野菜もお肉も新鮮。そして特に鮮魚は、味が全然違う🐟!!毎朝晩のごはんと、仕事の前に少し海辺を散歩するのがなによりの楽しみになりました。 pic.twitter.com/pMjfoYiFd1
— たまゆり (@tamaoyurika) December 3, 2021
▼Instagramはこちら(@tamayuri_traveler)