みなさんこんばんは、たまゆりです。
スペインは夜の19時。現在巡礼道から少し外れたバリャドリドという大きな街の宿でこれを書いています。相変わらず外は冷え込んでいます。窓が結露してる。
よく調べてみると、マドリードの道が通っているこの辺りの地域は、軒並み標高が7〜800m程度あります。日本の長野県みたいな感じ。そう考えると納得で、外の鋭い寒さと乾いた空気は、晩秋に松本を訪れたときの感じによく似ている気がします。
さてそれでは、昨日の日記です。
大して歩いてないのに、またもすごい独り言で長いです(笑)
【day6 Alcazaren-Valdestillas 16km】
昨日は全然よく眠れなかった。
30km近く歩いて、ようやく辿り着いたと思ったシャワーもかろうじて水ではない程度のぬるさで(後で試してみたら、温水器がまだ温まり切っていないだけだったので、断じてアルベルゲの設備が悪いわけではない)。
そして、今までのアルベルゲがほとんど一人だったからか、同じ空間で別の人が寝ていることが久しぶりで、多少落ち着かなかったというのもあったかもしれない。
夜中、寝たり起きたり、まだ日本を出発する時にひいていた風邪の症状がかすかに残っていて、鼻が詰まって息苦しい。
何度も寝返りを打って、隣のベッドに寝ているイーサンはさぞかし迷惑だったことだろう(次の朝謝ったら彼は優しいので「ぼくも眠れなかったんだ」と言った)。
なので、朝起きても全然疲れが取れた感じがなく、重いからだと、眠い目をこすりながら、何度も欠伸をしながらのろのろとベッドから起き出して準備をした。「おはよう」と言葉を交わしたイーサンもなかなかひどい顔をしていたけど、たぶん私はもっとひどい顔だったろう。
アルベルゲに泊まって巡礼道を歩いていると、毎日、服や寝袋を取り出して広げては畳んでバックパックに押し込む、そのくりかえしだ。元気な時はいいのだけれど、こんなふうに疲れている日にはちょっとうんざりしてくる。ものすごく不毛なことをしているかのような。
そんな気分でいると、昨日と変わらない(むしろ食べた食物の分軽くなっているはずの)バックパックが、やけに肩に食い込むように重く感じる。
思わずため息をつきながら、朝食がわりのビスケットをヨーグルトで流し込んでアルカサレンの街をのろのろと出発した。
朝日が昇ってくる前の時間は、フードを被りジャケットの襟を首まで閉めても、露出したままの頬が切られるように寒い。
空は少しずつ明るくなり始めていて、いかにも寒い季節という感じの薄くたなびいた雲がオレンジ色に染まっている。
おとといごろからアルベルゲで寝食を共にしているイーサンとは、なんだか変に気が合う。波長が合う、というのか。
彼は人との距離感の取り方にすごく慣れていて、一人で食事するのは寂しいが歩くときは一人がいい、という、いくらかわがままな私の性格を見抜いて、それにうまく合わせてくれている気がする。
もう一人、同じアルベルゲに泊まっていた品のいい白髪のフランス人の男性ジャンは、もうこれで7回目のカミーノなのだそうだ。彼は英語もスペイン語も話せない。フランス語だけだからコミニュケーションが難しかったけれど、とてもタフで人のいい優しい人だというのが伝わってきた。
ジャンはさすがに出発も早く、姿が見えなくなってしまったけれど、同じような時間に歩き始めたイーサンとは道の上を抜きつ抜かれつ歩いた。
朝方こそ冷え込んでいたものの、今日は天候的なものか地理的なものか、比較的風が穏やかであたたかい。
乾燥していることが多いこの地域にはめずらしく、うっすらと霧のようなものが出ていて、いつにないやわらかい朝日に照らされ、少しぼんやりした輪郭の風景の中を歩いた。
それにしても、今日はやっぱり疲れている。体が重くなかなか前へ進まない。
本当は、今日もどうにか30kmほど歩いて、シマンカスという城のある街まで行って、ホテルにでも泊まって少しゆっくり休みたいと思っていた。
でも、どうやらこの調子だと30kmは歩けないかもしれないな…。
けれどどちらにしろ、最低でも25kmは歩かないと次の宿がない。もうだいぶ歩き始めてしまったから、今更引き返すこともできない。
できれば雨が降り出す夕方前には、到着したいんだけれど。
体調に合わせて距離を調整しにくいのは、こうして宿が少ない道を歩いていてとても困るところだ。
ああ、自分がもっとタフならな。
もっと、強い身体に鍛えられていれば。もっと体調管理ができていれば。精神力があれば…
そんな風に気持ちもなんだか重くなる。
景色を楽しむ余裕もなくなり、何を考えてもネガティブな方へいってしまう。
実力以上の結果なんて出せないとわかっているつもり。なのにもっとこうだったら、ああだったら、と考えては、いつの間にか焦って歩くペースが早くなる。だけどそのうち肩にバックパックの紐が食い込んで痛み出す。だめだ、少し休まないとこれ以上は進めない。松林の中にどうにか椅子になりそうな切り株を見つけて、座り込んで、昨日バルのおじさんにもらった2つ目のリンゴをぼんやりとかじる。
なんで自分はこんなに弱いのだろう。嫌になるな。
悔し涙なのかなんなのかよくわからない涙がどんどん出る。(カミーノではいつも泣いてばかり。)
こういう時つい誰かに縋って甘えたくなってしまう、寂しいと思ってしまう、自分の価値を他人の言葉に求めようとしてしまう自分が嫌いだ。
いい歳なのにいくつになっても子供のように、弱った時優しく頭を撫でてくれる手を待っている。待っているはずなのに、そんなカッコ悪い自分を大好きな人に知られたくなくて、それで幻滅されるのが怖くて、素直に甘えたいと言うこともできない、そんな自分も嫌いだ。
そしてなによりも、自分で選んでこの道を歩いているくせに、ちょっと疲れたくらいで、悲劇のヒロイン気取りをしたがっている自分が大嫌いだ。
ばかやろう。強くなりたいんだろ。こんなところで、ウジウジしてる場合じゃないくせに。
こんなんで、よくもこの松の木のように強くなりたいだなんておこがましいことを言ったものだ。夢と今現実の自分はあまりに遠い。
カッコつけやがって、昨日までブログに書いてた言葉なんてぜんぶお笑い種だ。
考えてみれば、いつも私はこうだ。
自分で勝手に大きな理想を描いて、カッコいい強い自分を目標にして歩く。だけど実力不足に打ちのめされて、自己嫌悪に陥って。それでも幻滅されることが怖くて、理想と違う自分には価値がないと思い込んで、広げた風呂敷をたためなくて、無理して見栄を張り続けてしまう。そう、いつも同じ、何度もぶつかってきた失敗のパターン。
そんなふうに自分を追い詰めなくても、楽しく生きていいんだと、今の自分はもうわかっているはずだ。
素直に欲しいものを欲しいと、やりたいことをやりたいと、できないことをできないと、言うだけ。後ろめたいと思うことも恥ずかしいと思うこともないはずだ。
冷たい風に冷えてきた指に手袋を嵌め、もう一度手元の地図を見た。
すると、宿がないと思っていた次の街に、鉄道の駅があることがわかった。
そこから電車に乗れば、巡礼道からは少し外れるけれど、大きな街であるバリャドリドまで15分で行けるらしい。
次に宿のある街までは、歩けば残り15km。
電車に乗ってバリャドリドへ行けば、歩くのは残り5〜6km。
前までの自分だったら、たぶんここで、巡礼道を外れることを自分に許せなかったかもしれない。
結果、もっと無理をして、旅を続けられないほど疲れたり、体調崩したり、楽しめなくて本末転倒になっていただろう。
でも、今回は…少し違った。
「バリャドリドに行って、宿をとってゆっくり休もう。先のことは、それから考えよう。」そう決めることができた。
これは成長…そういってもいいものだろうか。頭があまりよく働かなくて、わからなかったけど。
ずっと、何度も何度もぶつかってきた同じ壁。その向こうへ、私は行こうとしているのかな。曇り空の向こうのうっすらとした弱い太陽みたいに、ぼんやりと光が見えているような気がした。
ちょうどそんなタイミングで後ろから歩いてきたイーサンに「私は次の街で電車に乗ってバリャドリドへ行こうと思う」と言うと「僕もそうしようと思ってた、疲れてるし新しい靴を買いたいんだ」と言った。
そこからまた追いついたり追い越されたりしながら、二人してノロノロと、鉄道駅のあるバルデスディジャスの街までの長い平原の道を歩いて行った。
街にたどり着いてバルで電車の時間をみると、なんと次のバリャドリド行きは夕方16時過ぎ。
今はまだ、昼の12時半をまわったところ。
イーサンと二人、思わず顔を見合わせて苦笑した。
「次の電車3時間後だって」「それだけあれば次のアルベルゲの街まで歩けるね」「歩く?」「………」「………」「「無理、やめよう!!!!(笑)」」全会一致で、この街で電車を待つことが決定した(笑)
イーサンはアメリカ出身だけれど、彼のお母さんはスペイン人。
英語とスペイン語両方が話される家庭で育ったため、スペイン語もとても流暢に話す。
そんなイーサンと共に、暇つぶしのために、村中のバルを一軒一軒はしごした(笑)
最後にはワインとソフトドリンクとタパスでお腹がいっぱいになって、待合室が閉まっていて何もない、ベンチに二人座って、どうでもいいことをひたすらしゃべりながら電車を待った。
次の日からのことを、地図と睨めっこしながら考えていると「疲れてるから今は考えるのやめなよ。今夜浴びる最高にあったかいシャワーのことだけ考えな」そう言ってくれたイーサン。ほんとにいいやつ。
ものすごい速さの特急列車が目の前を通り過ぎるのを何本も見送って、太陽の光が陰りだんだん肌寒くなってきたころ、ようやくバリャドリド行きの電車がやってきて、乗り込んだ。
あんなに待ちくたびれたのが嘘みたいに、ものの15分で電車は大きなバリャドリドの街へ着いた。
街の空気は真冬のように冷たく、もうクリスマスイルミネーションの飾りつけがされている。旧市街が残っていて、とてもきれいな街並み。
お互い予約した別々のホテルの分かれ道で、イーサンと「またどこかで会おう!」とハグして別れた。
(ラブ的な展開を期待した人いたらごめんなさい笑)
ひとりで歩いていた時は別に平気だったのに、そしてアルベルゲではひとりの部屋でのびのびくつろぎたいと思ってたくせに。近くにいた誰かが急にいなくなると寂しいな。
そんな都合のいいことをまた考えつつ、ホテルにチェックインして、近所のデパートで買ったとびきりおいしいお惣菜とワインをきれいな部屋で飲み(しこたま酔っ払い)、ルパン三世カリオストロの城を試聴して、なぜか妙にクラリスに感情移入して泣き(笑 ファンの皆様ごめんなさい)すっかりご機嫌な気持ちであとは泥のように眠った。
ご機嫌感が伝わってくる酔っぱらいの自撮り(笑)
以上、まとまってるんだかまとまってないんだかわかんない、昨日の日記。
おそまつさまでした。
ここまでお付き合いくださりありがとうございます。
なかなかお返しできないのですが、ブログやSNS、メッセージフォームを通していただいているコメント、どれも嬉しく拝読しています。元気をいただいてます。ありがとうございます。
それでは!たまゆりでした。
バジャドリード、リーガ エスパニョーラ!
アルベルゲが少ないと苦労しますね。歩く距離も泊まるところ次第。うむ、しかし相棒イーサンの写真がないぞ…
異国で単独だと毎日色々考えるさ。こんな日は(関係なく毎日飲んでいる気もするが)飲まなきゃやってられない。最後の幸せほろ酔い顔がいいですね!